植物育種家(プラントブリーダー)を目指そう!メリット・デメリット・育種家になるための方法を解説します

ブリーダーになろう!

大学院で植物学を専攻したはたけもんにとって、植物育種家(=プラントブリーダー、以下ブリーダー)は憧れの職業でした。卒業後種苗会社に就職し念願のブリーダーとして8年間勤務したはたけもんが、ブリーダーになって良かったこと、後悔したこと、そしてブリーダーになるために必要なことを思いつくままに書いて行こうと思います。

なぜブリーダーを目指したのか?

大学受験を前に進路を選ぶとき、皆さんは何を考えたでしょうか。

高校生だったはたけもんは悩みに悩みましたが、出した答えは「いつの時代も必要とされる職業に就きたい」というもの。

時代が移り変わり価値観が多様化しようとも、いつでもみんなのためになる仕事がしたいと思い、農学部を受験しました。

なぜなら、食糧生産はたとえ人類が火星に行こうとも必ず直面する最重要課題だからです。

研究室配属後はイチゴを題材に分子生物学的研究に明け暮れ、それなりに充実した毎日を過ごしました。

研究室に残り博士課程に進むことも考えましたが、いつも心の底にあったのは「この研究が世の役に立つのはいつなんだ?」ということです。

当時の研究課題は農学とはいえども基礎研究に近く、学術的な価値はあっても世の中に貢献できるのはいつのことになるのか検討もつきませんでした。

その反面、ときどき訪ねてくる先輩たちがとてもかっこよかったのです。

日々社会の課題に向き合い民間企業の資金力とガッツで戦うOB・OGのみなさんが輝いてみえました。

中でも魅力的だったのがブリーダー。農家さんや流通業界、小売など様々な業界の課題を品種改良の力で解決し、アカデミックな世界とも繋がりの深い職業です。

狭き門ではありましたが、民間企業のブリーダー職を目指して就職活動を行いました。

ブリーダーになるための方法は4つ!

一口にブリーダーといっても、そのバックグラウンドは様々です。

ブリーダー職につくための代表的な方法をご紹介します。

民間企業(種苗会社)のブリーダーを目指す

おそらくブリーダー人口の多くが民間企業(種苗会社)に所属しているのではないでしょうか。

日本には独立系の種苗会社であるサカタのタネやタキイ種苗、そして海外メジャーの傘下にある多数の民間種苗会社があり、限られた日本市場、また成長著しい海外市場を巡ってしのぎを削っています。

その根幹を担うのが、品種改良担当であるブリーダーです。基本的には就職活動を通して志望することになります。

はたけもんもこのパターンです。2社受けたうち、運よく1社に入ることになりました。

公的研究機関のブリーダーを目指す

みなさんイチゴはお好きですか?日本のイチゴ品種は甘い、美味しい、多収と他の追随を許さないほど完成度の高いものばかりです。

そしてその多くは農研機構を始め地方の農業試験場など公的機関所属のブリーダーが開発したもの。

そのほか民間企業が扱いづらいイネ、ムギ、ダイズといったか穀類の多くも彼らが開発したものです。

彼らが民間ブリーダーと異なる点は、市場原理に縛られないこと。

民間企業はもうかってなんぼの世界です。ところが公的研究機関は国民の利益のためにある場所。

事業として採算が合う、合わないにかかわらず育種プログラムを農家さんのために進めることができるのは、彼らだけだと思います。

大学の研究者としてブリーダーを目指す

このところよく話題に上るトマト品種があります。

ゲノム編集技術で機能性成分のGABA含有量を高めた「高GABAトマト」です。

育成したのは筑波大学の江面教授率いるベンチャー企業。

機能性野菜に限らず、時代の先端を行く品種開発の一部は大学発であることも多いのです。

植物育種学を看板に掲げる研究室は多くありますが、基礎研究に特化したところ、実際に品種改良を行っているところなど様々。

学生のうちから品種開発に関わりたいのであれば、有名どころの先生を頼りに大学を選ぶのも大事。

個人ブリーダーとして新品種を生み出す!

先ほどイチゴの話をしましたが、実は個人ブリーダーの貢献も大きいのです。

その代表は「章姫」。静岡の名ブリーダーが色、形、甘さにこだわって育成した品種です。

個人ブリーダーは基本的に組織に属さず、自ら所有する農園でコツコツと品種改良を行います。

日本では花ブリーダーが多いイメージですが、海外に行けば花、野菜問わず様々な作物に個人ブリーダーが存在し、時にはメジャーをひっくり返す大型品種を育成することも。

彼らの多くは大規模農家や地方の種苗店がスタートと思われます。

農業を知り尽くし、作物を知り尽くす彼らだからこそできる品種改良があるのです。

ブリーダーのメリット5選!

  1. 一年中植物を相手に仕事ができる:世界広しといえども、こんな仕事は農家さんの他になかなかないはず。植物好きにはたまらん。
  2. 農業界全体を見通すことができる:品種改良という仕事は情報が命。農家さんの声を聞く、流通業界の情報を集める、はたまたスーパーの店頭に立って自分が育成した品種の青果物を宣伝し、消費者の声を聞く。こうやって集めた生の情報を元に品種改良を行うのです。当然、10年もすれば業界通に。
  3. アカデミックな世界とも繋がりが深い:大学や公的研究機関とは常にパイプを持ち、先端技術を品種改良に生かします。大学を卒業した後も研究者の一人として仕事ができます。
  4. 希望すれば海外進出可能:民間企業は事業規模拡大のため海外市場を狙います。海外農場を建設した時、日本人ブリーダーを派遣することもしばしば。私と年の近い同僚も、スペイン、ハンガリー、インド、アメリカなどなど世界各地で活躍しています。
  5. 品種を世に送り出すことができる:仕事の成果が目に見えるっていいですよね。自分の品種が農家さんに喜ばれ、全国のスーパーに並んで消費者が手に取ってくれる…。技術者として最高の瞬間です。

ブリーダーのデメリット5選!

  1. 一年中植物にかかりっきり!:作物のどんな表情も見逃さない。それがブリーダーです。品種化間近ならなおのこと。採用してくれる生産者に迷惑をかけないよう、寒い日の着果は大丈夫か、暑い日に生理障害はでないか、いつも心配しています。学生時代は海外旅行大好きだったはたけもんですが、ブリーダーになってからというもの旅行に行けた試しがありません。
  2. 日に焼ける!:基本的にフィールドワークなので、日焼け止めと帽子は欠かせません。春から夏は紫外線カットメガネも必須。
  3. 体力勝負!:所属によりますが、私が入社した先はかなりの体育会系。他社からは「軍隊!」と揶揄されるほど。笑 そしてウワサは本当だったのです。「3歩以上は歩くな!常に走れ!」と古老に檄を飛ばされ、毎日クタクタでした。社会人の洗礼としてはかなり古風なやり方ですね。
  4. 成果を出すのに時間がかかる:品種改良にかかる時間は早くて5年、長くて10年以上。さらに修行期間が5年ほどかかります。大学の友人が若くして出世し高給取りとなるなか、スコップ片手に汗かいている自分…負けるな若手ブリーダー!
  5. 世間的に認知度がイマイチ:海外では人気職業のブリーダーですが、日本での認知度はほとんどありません。そもそも、「種苗会社ってなに?」という有様です。若かりし頃、合コンでは「メーカーの研究職…」とお茶を濁しておりました。

植物育種家(プラントブリーダー)になるためには!

元種苗会社ブリーダーのはたけもんが、ブリーダーになるためのステップを伝授します。

農学部に入って植物学の勉強をする

企業によっては専門を問わないところもありますが、やはり基本は植物学。

育種学研究室や園芸学研究室、植物病理学研究室など、品種改良に関わりのある研究室への配属を狙いましょう。

できれば大学院に進学し、修士号取得がベター。

ちなみに公的研究機関のブリーダーや海外のブリーダーの多くは博士号を持っています。

英語を勉強し、できれば海外経験を積む

ブリーダーにとって欠かせないのは情報収集と素材収集。

国内外の研究機関や学会からどれだけ情報を集め、品種改良に役立つ素材を手に入れられるかが勝負です。

はたけもんが大学で得た最も大きなものは、英語文献を読む力。在学中はひたすら論文を読み漁り、英語論文を2本書いて卒業しました。国際学会での口頭発表も2回。これが思いの外役に立っています。

そして海外経験。念願の海外留学は果たせませんでしたが、長期休暇はいつもアジア地域を放浪していました。おかげで中学レベルの英語を恥ずかしげもなく話すことができるように。笑 下手でも伝われば良いのです。

体力をつける

前述の通りブリーダーはフィールドワークの体力勝負!

暑い時も寒い時も、常に畑に立ち心も体もフル回転させる体力が必要なのです。

ある時メキシコのトウガラシ試験地を調査したときのこと。時差ボケと40度を優に超えるジメジメとした暑さの中モウロウとして日陰で休んでいたのですが、同僚の韓国人おじいちゃんブリーダー(60代)は猛然とデータを取りまくっていました。海外出張は時間勝負ですが、あの過酷な環境では体力と精神力が物を言います。「負けた…」と思いましたね。笑

学生時代にスポーツでもやっておけばよかったと後悔しました。

以上、ブリーダーとはどんな職業かについてつれづれなるままに書いて見ましたが、いかがだったでしょうか。

諸事情あって退職したものの、今後ブリーダー以上に面白い職業に出会うことはないと思えるほど私に取っては天職でした。

最高に面白いブリーダー、興味がある方はぜひチャレンジしてみてください!

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