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「トマトのエボラ」が日本にやって来た!トマトキバガの正体と効果的な殺虫剤、日本の発生地域について

2021年11月12日、熊本県病害虫防除所がトマトキバガを国内で初めて確認したと発表しました。

聞きなれない虫トマトキバガですが、実は世界中のトマト栽培で問題となっている大害虫!

こいつはえらいこっちゃやで…!

目次

世界で猛威を振るうトマトキバガ

南米原産、ヨーロッパ等で広がるトマトキバガですが、被害が大きいのはアフリカ。

ナイジェリア北部の州政府は24日、州内のトマト産業がガの幼虫の食害で壊滅的な被害に見舞われていることを受けて、非常事態宣言を発令した

AFP BBCnewsより

CABI発行の報告書によると、アフリカのトマト生産額は約3000億円。

それに対してトマトキバガによるトマトの被害額はなんと約800億円!

その恐ろしさから、現地では「トマトのエボラ」と呼ばれています。

どれだけ深刻な害虫なのか分かりますね。

トマトキバガはアジア地域で生育可能!

出典:Tomato leafminer (Tuta absoluta): impacts and coping strategies for Africa

20~27℃で活発に活動するトマトキバガ。中には幼虫で越冬するとの報告もあります。

上の地図、ピンクが生育に適する温度帯の地域を表していますが、日本をはじめアジア地域は適温の範囲内。入ってくれば広がる可能性が高いのです。

トマトキバガの生態とは?

出典:Tuta absoluta: the tomato leafminerより

とにかく幼虫が大食漢!

葉や茎、果実までなんでも食べてしまいます。

そして食害する作物もさまざま。

寄主植物

インゲンマメ、キバチタバコ、シマホオズキ、シロバナヨウシュチョウセンアサガオ、ト

ウガラシ、トマト、クコ属植物及びナス属植物の生茎葉並びにトマトの生果実。

植物防疫所webサイトより

見慣れない害虫、トマトキバガの見分け方

日本でトマトを栽培していると、害虫の蛾といえばこれ!タバコガです。

オオタバコガ成虫 あいち病害虫情報より
オオタバコガ幼虫 出典:あいち病害虫情報より

それに対して、新たな害虫トマトキバガはこんな感じ。

出典:FLORIDA FIRST DETECTORより

体長は1cm程度、特徴は触角と口です。

  • 触角:茶色と白のシマシマ模様
  • 口:ストロー状の口が上を向く

そして幼虫は英名Tomato Leaf Minerの名の通り葉に潜ります。

葉に潜るといえばハモグリバエが一般的ですが、その違いがこちら。

出典:FLORIDA FIRST DETECTORより

白矢印がハモグリバエ、赤矢印がトマトキバガです。

ハモグリバエが線状にクネクネ潜っていくのに対し、トマトキバガの幼虫は面で攻めて来ます。

赤矢印のように葉が透けて見えたら要注意!

トマトキバガによく効く殺虫剤は、アクタラ顆粒水溶剤+マッチ乳剤と思われる!

エジプトアレキサンドリア大学の研究チームの報告(2018)によると、トマトキバガに効果的な殺虫剤は以下の通り。

※成分名を元に日本で販売中の殺虫剤を表示しています。

  • ダーズバンDF(今のところトマトに適用なし)
  • アクタラ顆粒水溶剤
  • マッチ乳剤

アクタラとマッチの混合でさらに効果が高まるようです。

トマトキバガに効くかも。南アフリカ共和国が緊急登録した殺虫剤一覧

トマトキバガの広がりに危機感を持った南アフリカ共和国が、2016年に以下の殺虫剤を緊急登録しました。

効果があると思われる殺虫剤一覧です。

※成分名を元に日本で販売中の殺虫剤を表示しています。

  • プレバソンフロアブル
  • フェニックス顆粒水和剤
  • アグロスリン乳剤
  • スピノエース
  • ディアナ
  • トルネードエースDF
  • トアロー水和剤
  • トレボン乳剤

イタリアでは殺虫剤抵抗性系統が発生!同じ薬剤の連用に注意

ギリシャの研究グループはギリシャとイタリアのトマトキバガを調査、イタリアのトマトキバガにプレバソン、フェニックスに相当する殺虫剤への抵抗性が確認されたと発表しました。

In 2014, for the very first time tomato borer cross resistance between chlorantraniliprole and flubendiamide was clearly detected in Italian populations

引用:First report of Tuta absoluta resistance to diamide insecticides

それにしてもトマトキバガは退治しにくい害虫のようです。

それにはこんな理由が。

・ライフサイクルが短い

・増殖能力が高い

・有効性のある殺虫剤が限られ、それらを使い過ぎる

引用:South African development of agriculture

トマトキバガに殺虫剤抵抗性を獲得させないため、殺虫剤の使い方には気をつけましょう。

  • 殺虫剤はIRACグループにしたがって分類する
  • 殺虫剤を使用したら、同じ分類の殺虫剤は60日間以上空けてから使用する
  • できれば一作につき同じ分類の殺虫剤の使用を一回に抑える

トマトキバガには、天敵生物タバコカスミカメが効果的!

出典:Agrisect Inc.より

薬剤抵抗性が発達していると言われるトマトキバガ。ならば天敵生物タバコカスミカメで勝負です。

トマトのタバココナジラミ及びトマトキバガにたいしてタバコカスミカメが使われるようになった。(TYLCVも育苗段階からの放飼及び抵抗性品種などで発生が激減している)もちろん、スワルスキー(スワルスキーカブリダニ)の登場もきわめて重要です。

引用:アリスタwebサイトより

トマトキバガ が確認された地域について 2022年5月20日最新版

残念ながら、その後トマトキバガ の確認と特殊報の発表が相次いています。

時系列順にお伝えします。

熊本県でトマトキバガ 国内初確認 2021年11月

トマトキバガ確認地域

2021年の10月に熊本県内のトマトハウス内で発見されました。

葉の薄皮化及び白~褐変症状と果実の穿孔症状が発生し、症状が発生した葉や果実において乳白色~緑白色でやや桃色がかったイモムシ型の幼虫の寄生が確認された

引用:令和3年度(2021年度)発生予察特殊報第2号

これが国内初の報告です。

宮崎県でトマトキバガ 確認 2021年12月

トマトキバガ確認地域

続く12月、今度は宮崎県のトマトハウス内でトマトキバガ が確認されました。

当該ほ場では、暗色で細長い小さなガの成虫が確認され、トマトキバガであることが疑われたため、上記の幼虫及び成虫を採集し、農林水産省門司植物防疫所に同定を依頼し、その結果トマトキバガであることが判明した

引用:令和3年度病害虫発生予察特殊報第3号

鹿児島県でトマトキバガ 確認 2022年3月16日

トマトキバガ確認地域

年が明けて3月、隣県鹿児島のピーマン圃場周辺でトマトキバガ が捕獲されました。

志布志市のピーマンほ場周辺に設置したトマトキバガの侵入警戒トラップにおいて,誘殺されたガの成虫を門司植物防疫所鹿児島支所が同定した結果,トマトキバガであることが確認された

引用:病害虫発生予察 特殊報第3号

トラップで確認されたものの、ピーマンの被害はないようです。

大分県でトマトキバガを確認 2022年3月24日

トマトキバガ確認地域

鹿児島に続き、大分でもトマトキバガを確認。

県南西部のトマト施設周辺に設置したトマトキバガの侵入警戒トラップにおいて、2地点でトマトキバガ疑義成虫が確認された

引用:令和3年度病害虫発生予察 特殊報第3号

こちらも実際の被害は確認されていません。

福岡でトマトキバガを確認 2022年3月29日

トマトキバガ確認地域

鹿児島、大分に続き、福岡でもトマトキバガを確認。3月中に3回目です。

県内のトマトほ場周辺に設置したトマトキバガの侵入警戒トラップに誘殺されたガの成虫の同定を農林水産省門司植物防疫所に依頼した結果、トマトキバガであることが確認された

引用:令和3年度病害虫発生予察特殊報第2号について

こちらもトラップのみ。実被害は報告されていません。

長崎でトマトキバガを確認 2022年4月5日

トマトキバガ確認地域

月をまたいで4月、長崎でトマトキバガ が確認されました。

県内のばれいしょ圃場周辺に設置したトマトキバガの侵入警戒トラップにおいて、本虫と疑われる成虫が誘殺された。その成虫を門司植物防疫所に同定を依頼したところ、トマトキバガであることが確認された

引用:令和4年度病害虫発生予察 特殊報第1号

今回はトマト、ピーマンと同じナス科であるバレイショの圃場です。

やはりトラップで発見され、被害自体は報告されていません。

愛媛でトマトキバガを確認 2022年4月4日

トマトキバガ確認地域

ついに四国初上陸です。

中予地域のトマト施設周辺に設置したトマトキバガの侵入警戒トラップにおいて、1地点でトマトキバガ疑似成虫(写真1)が誘殺された。捕獲された成虫を神戸植物防疫所に同定依頼した結果、本県では未発生のトマトキバガであると同定された

引用:令和4年度 病害虫発生予察特殊報(第1号)

和歌山でトマトキバガを確認 2022年5月下旬

トマトキバガ確認地域の分布
トマトキバガ確認地域

2021年11月以降、九州・四国で確認されてきたトマトキバがですが、ついに本州上陸が確認されました。

県中部の印南町のミニトマト施設周辺に設置した侵入警戒トラップで成虫が誘殺された

引用:日本農業新聞2022年6月14日

これでトマトキバガの侵入が確認されたのは8県目にのぼります。

また、トマトキバガは風にのって長距離移動することが知られています。

西から東へ確認範囲が拡大していることを考えると、今後も風による移動で生息域を拡大していく恐れがあります。

ついに日本に入って来てしまったトマトキバガ。

我々農業者は正しい知識を持って立ち向かいましょう!

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この記事を書いた人

神戸大学大学院農学研究科卒業、元種苗メーカー研究開発部門所属。
こんなことが得意です。
・野菜の栽培
・トラクター、農業機械の操作
・環境制御ハウスのオペレーション
・農家さんへの栽培指導、講習会の開催
・商品企画、開発、設計
・バイオサイエンス分野の最新情報の提供
・統計解析、プログラミング(←勉強中)

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